竹工芸、竹細工をはじめるのに必要な道具を紹介します。
最初に揃えたい道具を紹介して、次の章で詳しく解説していきます。
竹細工を始めるためのおすすめの道具
竹細工をはじめる時に揃えたい道具のセットです。
名称 | 用途 |
竹割り包丁 | 竹を割ったり、厚さを揃えたりする道具 最初は刃渡り160mm程のが軽くておすすめです |
ノコギリ | 竹を必要な長さに切る道具 最初は木工用で大丈夫です |
テープメジャー | 竹ひごの長さや、制作物の大きさを測る道具。 メジャーは柔らかいテープメジャーがお勧めです。 |
剪定バサミ | 籠作りではみ出た竹ひごを切る道具です 植木用の剪定バサミです |
切り出しナイフ | 面取りをしたり、竹ひごの形を整える道具 |
ノギス | 竹ひごの幅を測る道具 デジタル式がわかりやすいです |
これら6つの道具さえあれば
- 竹を必要な長さで切る
- 竹ひごを作る
- かごを編む
- 余った部分をきれいに切る
という感じで、竹かご作製の基本作業ができます。
竹割り包丁を除けば、竹細工の道具というのはどれもホームセンターや100均で手軽に買えるものばかりで、竹割り包丁を売っているホームセンターもあります。
他にもあると便利なものや必要なものがありますので、次の章より、竹工芸・竹細工で使う道具を一つ一つ解説していきます。
竹工芸・竹細工で使う主な道具と解説
竹工芸・竹細工で使う道具の解説です。
竹の種類や製作物によって様々な道具を使いますが、ここでは真竹を使った竹かご作りで使う道具を説明します。
いくつかの写真は熊本県湯前町の上米良鍛冶工場さんにご協力頂きました。
竹割り包丁
竹工芸で一番使用するのが、竹割り包丁です。
サイズは
上は刃渡り190mm
下は刃渡り125mm
です。
おすすめは、刃渡り160mm+胴金くらいのもので、長さと軽さのバランスが丁度よく、長く使うことができます。
長い方は、竹を割るところから全てのヒゴ作りで使えますが、少し重いです。
短い方は、小さく軽いので扱いやすく、細い竹ひごを半分に割るときによく使います。丸竹を半割りするために別の両刃の刃物が必要になります。
別府などでよく使われる竹割り包丁は、刃と柄の間に胴金(どうかね・どうがね)というものが付いていて、竹を剥ぐ(厚みを揃える)ときに、胴金で竹の表皮と身(内側の部分)を平行に割いていきます。
竹割り包丁の刃で切り込んで、胴金で開いていくという感覚です。真竹での竹細工では銅金付きがおすすめです。
全国で竹工芸・竹細工は行われていますので、竹割り包丁には様々な形があって、胴金が無いものもあったり、呼び方も「竹割鉈」など変化があります。
鈴竹や女竹を使う竹細工では、竹が細いために、胴金がついていない小さな竹割り包丁が使われます。
ノコギリとノコギリ台 長さを揃える道具
のこぎりは
- 粗い目 竹林から竹を切り出したり、大まかな長さを揃える時に使います
- 細工用 竹ひご作りの仕上げの時に綺麗に切る時に使います
精度があまり必要ないときは粗い目を使い、仕上げでは精度が必要ですので、刃が薄く目が細かい細工用のノコギリを使います。
竹林で竹を切り出す時など丸竹を切るときには、私は電動ノコギリ(レシプロソー)を使っています。多く竹ひごを作るときには非常に便利です。
竹は丸いので、動かないようにのこぎり台にのせて切ります。
写真ののこぎり台は手作りで、角材を斜めに切って合板にネジ止めしただけのものです。竹が動かないようにできればどのようなものでも大丈夫です。
ケガキコンパス 丸竹に目印をつける
竹を割る前に目印をつけて、割る幅の目印を付けていく道具です。
おすすめは「ケガキコンパス」で、製図用のデバイダーを使われる方もいます。
これらを使うと、正確に等間隔で印を付けていくことができます。
値段は1,100円ほどで、写真上がおすすめです。
柔らかいテープメジャーや印をつけた細い竹などを竹に当てて、よく尖らせた鉛筆で目印を付けていくこともできます。
目印の目安は、完成ひごの幅+0.5mmほどがベストです。
4mm幅の竹ひご→4.5~5mm間隔
目印の間隔は、竹割りに馴れない間は、求める竹ひごの幅+1mm、少し慣れてきたら+0.5mmとすると無駄がありません。
切り出しナイフ 様々なパーツを削る
竹工芸での切り出しナイフは
- カゴの縁(ふち)の面取り
- 縁の合わせ削り
- 力竹、筏竹作り
- 竹箸つくり
などなど、沢山の用途で使います。
切り出しナイフは1500円ほどでホームセンター等で売っていますので、最初はそれでも充分です。切れなくなったらすぐに砥石で研げば、そこそこの切れ味を保つことが出来ます。
柄は付いていたほうが良いかもしれませんが、慣れればどちらでも大丈夫です。写真下の柄付き切り出しナイフはは780円で買ったものですが、最初の頃はこれで色々作っていました。
幅取り・幅決め 幅を揃える
竹ひごの幅を揃えることを幅取りや幅決めと言います。
左側は、右手用・左手用の小さなナイフ2本を木に立ててるタイプで、右側は鉋の刃(のようなもの)を2枚使うタイプです。
竹ひごを刃物の間に通し、両サイドを削って幅を揃えるという仕組みは同じです。
(右側の写真は、上米良鍛冶工場さんより頂きました)
こちらは上米良鍛冶工場さんで作られている幅取りの道具です。
刃の角度が固定されていて、幅をダイヤルで微調整します。刃の角度、刃の固定角度が工夫されていますので、どなたでもうまく幅を整えることができます。
このタイプは全国で多く作られていて、お持ちの方をよく見かけます。
2本のナイフを立てるタイプでは、刃の研ぎ方や木に立てる刃の角度が大切で、慣れないと上手に綺麗な竹ひごを作れません。
立て方は、しのぎ面が内側・外側のそれぞれがあり、地方や作家によって違います。最初に教わった、慣れた方向で立てられているようです。
どちらのタイプにも言えるのですが、幅取りでは、竹の両端が必ず削れていなければいけません。しかし、片方に刃が食い込み細くなりすぎて失敗することがあります。
失敗を防ぐには、竹割り包丁での竹割りや、幅取りの刃物の研ぎや角度、竹の引き方など、使う人が工夫をしながら使うことが求められます。
裏すき銑(せん)・厚さ決め 厚さを揃える
竹ひごの「身」の方を削って、厚さを揃える道具です。
この作業を「裏すき」「厚さ決め(?)」といいます。この道具を使うことによって、正確にヒゴの厚さを揃えることができます。
刃物は鉋と同様の片刃で、鉋は鉋自体を動かしますが、裏すき銑では竹を手で引いて削っていきます。
馴れが必要な道具ではありますが、あると非常に便利です。
宮崎県日之影町の竹細工の名工だった廣島一夫さんとお話をした時、別府の裏すき銑を知ったときが一番驚いたと話されていたことを思い出します。
面取り包丁
厚さと幅を揃えた竹ひごは、角が角張っていますので、角を取ります。これを面取りといいます。
面取りは
- ササクレを防止し怪我を防ぐ
- 手触りを良くする
- 竹ひごに丸みを帯びさせ表情をもたせる
など、竹工芸では大切な工程です。
上の写真は上米良鍛冶店さんの面取り包丁です。
面取り包丁は切ってある溝の幅が大切で、竹ひごの幅によって溝を使い分けます。適当な幅がないときには、平ヤスリなどの鋼で作られているものを購入し、グラインダーで削って自作する場合もあります。
こちらは、幅取りナイフを使った面取りです。バイスに挟んだり木に挿して使用します。幅が狭いものから広いものまで対応できます。
買い物かごの持ち手など大きな竹ひごでは、切り出しナイフや竹割り包丁で面取りをします。
ヒートガン・はんだごて 竹を曲げる道具
竹かごの縁(ふち)や網代のカゴの立ち上げのときなど、竹を熱で温めて曲げる場合が多くあります。その時に使うのがヒートガンやはんだごてです。
ヒートガンは、竹かごバッグの縁(ふち)を曲げる時など、竹を緩やかに曲げる時に使います。アルコールランプでもokですが、火を使わないメリットは私にとっては大きいです。
はんだごては、網代でカゴを作る時など、直角に近い形に曲げる時に使います。曲げる角度に合わせてハンダゴテの先に治具を取り付けます。私は大きなはんだごてを使っていますが、50wほどの電子部品用で充分です(むしろ、そちらをおすすめします)。先端だけ銅板(1mm厚)を曲げて作られてください。
※熱で竹を曲げることを「火曲げ」とも言います。これは、アルコールランプなどの火を使って熱を加えていたので火曲げと言うのだと想像しています。
磨き銑(せん)竹の表面を削る道具
竹の表皮を削る道具です。
竹を染色したり漆を塗るときなど、竹の表皮を削ることがあり、別府ではこのことを「竹を磨く」というのですが、このときに使う道具を磨き銑といいます。※職人さんや地域によっては違う呼び方をされると思います。
竹の皮を削るには、磨き銑のほか、切り出しナイフを使われたり、曲面が欲しいのであれば草刈り鎌を使います。私も最初は草刈鎌を使っていました。
切り出しナイフで削る方法もあります。
こちらの映像は駿河竹千筋細工の作家の方の映像です。切り出しナイフで削られていることがわかります。
また、五世早川尚古斎(重要無形文化財保持者)の作品制作の映像には、水につけて表皮を十分柔らかくした竹を、切り出しナイフを使って削られているものを見たことがあります。
銑という道具は、木の皮を剥ぐときなどでも同様のものが使われていますね。
菊割り 竹を一度に沢山割る
竹を割る道具です。4分割から10分割ほどまで様々な大きさの物があります。
※写真は、上米良鍛冶工場さんより頂きました。
竹割り包丁などで割る手間が大幅に省けますので、大量に割竹が必要なときに便利です。
この映像のように、菊割りの機械もあります。円盤にいくつも菊割りが付いているのは、竹の直径によって割る本数を変えることにより、竹ひごの幅を一定に揃えるためです。
くじり 狭い場所を広げる
溝くじりは主に竹籠の縁(ふち)を竹で巻くときに使います。
平くじりは持ち手をヒゴの間に通すときに、ひごとひごの隙間を開けるときに使います。また、縁巻きのときにも使います。
「青物」という、農業で使うものなどを作る場合、クジリはほぼ必携の道具となります。
作りたい籠や職人によって大きさが様々にあって、細い籐を通すときにはとても小さなくじりを職人が自作したりもします。
文鎮 竹編みや立ち上げのときに
六ツ目編みなどを編む時や、竹かご編みの立ち上げの時の重しとして1~1.5kgほどの文鎮を使います。
無くてもいいのですが、重しを使うと手軽にズレを防げるために便利です。
あまり売っていませんので、鉄工所で作ってもらうなど手に入れるには工夫が必要ですが、和裁用の持ち手が有る同様の文鎮があり、MonotaROでは少し重いヤヨイ化学 文鎮が売ってあります。
他にも、竹工芸講座の生徒さんが習字用の文鎮を沢山重ねて作られたものを使ってみたのですが、充分に使えてなかなか良かったです。
竹ひご通し 丸い竹ひごを作る道具
丸い竹ひごが必要になるときには、ひご通しという道具を使います。
細いひごを作るには、徐々に細くする必要があるので沢山の穴が必要です。写真のものは特注で作ってもらった「ひご通し」ですが、やりすぎました。
静岡の駿河千筋竹細工(伝統的工芸品)でよく使われる道具です。
霧吹き・水入れ 竹編みには水が大切
竹工芸・竹細工で竹を編む時に、とても大切なのが水です。
竹ひごは滑りやすいので水をつけて滑りにくくしないと綺麗に編めませんので、必要なときには必ず水をつけましょう。これは、初心者でもベテランでも違いはありません。
人間国宝であった生野祥雲斎は古赤絵の大きな水盤を使われていました。
また、幅取り(幅決め)の道具や裏すき銑を使う前には、竹ひごを十分水に浸けて身を柔らかくしてから行います。
竹工芸で使う道具一覧表
竹工芸で使う道具 | 概要 |
竹割り包丁 | 竹を割ったり剥いだりするときに使う専用の包丁です。 使う方、地方によって形が違います |
切り出しナイフ | 竹工芸では様々な場面で使用します。 良く研いだ竹割り包丁で代用できる場面もあります |
のこぎり | 木工用、竹切り用どちらでも可能です。 細かく切りたいときは竹切り用を使用してください |
のこぎり台 | 丸竹に傷が付かないように固定できれば何でも良いです |
幅を揃える道具 | 幅取りナイフなどの、ひごの幅を揃える道具 |
厚さを揃える道具 | 裏すき銑などの、ヒゴの厚さを揃える道具 |
表皮を削る道具 | 磨き銑、切り出しナイフなど表皮を削る道具 |
くじり | 平くじり、溝くじりなど、竹で縁を巻くときなどに使います |
定規 | カゴを測ったり、ケガキコンパスの幅を決めるときなどに使います |
メジャー テープメジャー | テープメジャーはカゴの円周を実測するときに使います。 |
ケガキコンパス | 竹を割る時の目印をつけるときに使います テープメジャーと鉛筆でも代用できます |
ノギス | 竹ひごのサイズを測るときに使います。 アナログ・デジタルどちらでも良いです |
剪定バサミ | 編んだあと、余分な竹を切るときなどに使います |
霧吹き 水入れ | 竹を編むときの滑り止めなどに水を使います 竹は滑りやすいので必要です |
ヒートガン はんだごて | 竹を熱で曲げる時に使います。 |
千枚通し | 籐や竹釘を通す穴を開けます |
文鎮 | 六ツ目編みなどのときに有れば便利です。 1~1.5kgほどのものがおすすめです。 |
手袋 | ケガ防止や滑り止め。 竹を割る時や幅取りの時などに使います。 |
マスキングテープ | 仮止めや目印にするために使います |
針金・被覆針金 | 縁を仮止めするときなどに使います、細く柔らかいものが良いです |
クリップ・洗濯バサミ | 縁を仮止めするときなどに使います。 |
砥石1000番 | 竹割り包丁をはじめ、各種刃物を研ぎます。 1000番、仕上げ3000番など |
鉛筆 シャープペン | 竹に目印を書き込みます Bくらいの濃さががおすすめです |
筆記用具・メモ帳など | 記録するために使います |
麻ひもなど | 竹ヒゴなどを纏めるときに使います |
応急処置セット | 絆創膏、とげ抜き、消毒剤、清潔な布 |
この他にも、作る物によって様々な道具を使います。
現在、竹工芸には様々な道具がありますが、昔の青物(竹を採ってきたままの状態で作るもの)を作られる職人の方は、竹割り包丁とノコギリなどのわずかな道具だけで籠を仕上げられていたそうです。
鬼滅の刃で竹かごを補強するシーンがありますが、彼は竹割り包丁とノコギリだけで補強していたのだと思います。それくらいに道具が必要ない工芸のひとつだと感じています。
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